「秋ナスは嫁に食わすな」なんて諺、聞いたことありますよね。
これには良い解釈と悪い解釈の2通りがあるようですが……。
実はこの他に、「秋サバ」「秋カマス」「秋のコノシロ」(いずれも
旬のおいしい魚)なんかも「嫁に食わすな」らしいです。
これじゃあ良い解釈でとらえないとやってられませんねえ。
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「秋ナスは嫁に食わすな」
さてこの諺の由来は、
「秋なすび 早酒(わささ)の粕につきまぜて よめにはくれじ 棚におくとも」
という『夫木和歌抄(ふぼくわかしょう:鎌倉後期の私撰和歌集)』にある和歌だとか。
早酒(わささ)とは新酒のこと、「よめ」は「夜目」で、ネズミのことを指すそうです。
よって意味は、
「酒粕に漬けた秋ナスを棚の上に置いておくのはいいが、ネズミに食べられないように気をつけろ」
ということになるようです。
……“嫁”じゃなかったんですねえ(笑)。
もっとも、やはり「よめ」は嫁じゃないかなんて説もあるようなので、わかりませんが(笑)。
でももしこの和歌から諺ができたとしたら、やっぱり「うまいものは嫁にはやらん」
ってな“悪い解釈”が正しそうな感じもしてきます。
昔の川柳には「秋茄子はしうと(姑)の留守にばかり食ひ」といったものもあるとか。
お嫁さんも大変です(笑)。
これだと報われないので、力を入れて“良い解釈”を説明していきませう。
一口に言えば、「大事な嫁の体を気遣うから食べさせない」ってことです。
はあ、ずいぶんとやさしい話になってきました(笑)。
ん? ってことは秋ナスは“嫁の体に悪いもの”ということになってしまいますね。
何か根拠があるんでしょうか!?
実はあるんです。
しかもわんさか(笑)。
まず『本草綱目(中国明代の書)』に、
「ナスは性寒利、多食すれば必ず腹痛下痢す、子宮を傷める、婦人食して益なし」
また『開本草』には、
「茄子は、性冷にして腸胃を冷やす、秋に至りて毒最甚し」
さらに『傷寒論』にも、
「多食すれば子宮を損なう」
日本の貝原益軒の『養生訓』でも、
「ナスは性寒利、多食すれば必ず腹痛下痢す、女人はよく子宮を傷なう」
(これは本草綱目を見て書いたようでもありますが(笑))
……とまあ、いろんな人がナスは良くないと書いています。
大意はどれも「体が冷えるから腹を痛める」ってことです。
そのために「秋ナスは嫁に食わすな」なんて諺になったというお話。
!念のため言っておきますが、これはあくまで昔の人の説ですよ。
実際にナスが体に悪いなんて話は、現代では言われないと思います。
ところで、ナスは本来夏野菜なのに、なぜわざわざ「秋ナス」なのかというと。
そもそも秋は季節の変わり目で体調を崩しやすいことに加え、「秋ナス」には、
“種が少ない”⇒“子宝に恵まれない”から、縁起を担いだって話もあります。
さて、では秋ナス以外の魚たちは何で食わせないのか?
これはやはり嫁をいじめているのではないか(笑)!?
いやいや。例えばサバ。
今では秋はサバがとてもおいしい季節ですが、もともと「サバの生き腐れ」
ってくらい鮮度が落ちやすい魚。
昔は保存法や加工法が限られてますからねー。
それでうっかり魚にあたって子を産む大事な体に障らないように、
「食わすな」ってことになったようです。
「秋カマス」や「秋のコノシロ」なんかも同じような内容。
やっぱり嫁にやさしいのかも。
さて。
実際に「秋ナスは嫁に食わすな」の意味としてどっちが正しいか。
というのは、実は決めきれないようなのです。
嫁いびりの悪い解釈を信じるか、嫁を気遣った良い解釈を信じるか?
どうせなら良いほうを信じたほうが、気分がいいのではないでしょうかうっしっし
<文責・秋田大介>
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