平和の意味

長野オリンピックは「1998」だからもう8年も前の出来事になる。

私は営業先から「直帰します」と会社に電話をかけて

スーツに営業バッグといういでたちのまま新幹線に飛び乗った。

昼頃「チケットみつけたよ!いくら出す?」という友人からの電話。

その場で外国人と交渉してもらい、手に入れたチケット。

はじめて降りた長野駅は思ったよりあたたかかった。

駅は一晩中明るくて、いろんな人が行き交っていた。

角の方に目をやると、外国人が寝袋で丸くなっていた。

長野の街へ出る。

ホッケーの試合を見ている友人を待つ間、ひとりで散歩した。

店は半ば閉まっていたが、空いている店はどこも盛況で

入りきれず屋外でビールケースを机代わりにジョッキを掲げる団体もいた。

半分シャッターの下りた民芸品店のドアを叩き、

ショーケースの中の古びたふくろうの置物を指差し

「スノーレッツ、スノーレッツ!」と騒ぐ外国人の一団がいた。

※スノーレッツは長野五輪のキャラクター

奥からおじいさんがのっそりと出てきて

「それはふくろうだよ」と言いながら電卓を取り出すと、

不安げなおばあさんを尻目に嬉しそうに交渉をはじめた。

道行く人が皆、笑顔だった。

唐突に「これが平和なんだ」と気づき不覚にも涙が出た。

世界が広がった気がした瞬間。

友人と合流して、この気持ちを伝えようとしたが上手く伝わらなかった。

彼を見たいと思わなければ、

私は平和の意味を知らずにいたかもしれない。

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おつかれさま。ありがとう。

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